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スパナチの本館で夜店ネタをやったら、ステバキも浮かんできたので置いておこう!
えーと、
シビルウォー後にワカンダも離れてふらふら世直し旅してる二人。
急がないと8月終わっちゃうよ。
「…なんだこりゃ」
「すごいね」
まずは一通り見て回ろうと公園内を歩いてみたが、さっきから二人して同じことを繰り返し合っている。
普段仕事の最中や、任務に関する話をしている時には目立たないのだが、一般的な市民生活については、実のところ二人とも感覚が現代について行っていなかった。
「こんな公園で映画上映すんのか」
「らしいね」
映画は映画館の中で、座席に座って観るものだろ。そう口にして本心から分かってくれるのは多分隣にいる相手だけだろう。
スクリーンの前の舞台では若いミュージシャンが何やら演奏をしている。
「音楽も変わったよな」
ドンピシャのタイミングでバッキ―が言うので、思わず笑った。
「正直よく分からない」
白状すると今度はバッキ―が吹きだす。
「お前、昔っからうるさいの苦手だよな」
「そうだっけ?」
「バンドの演奏に連れてってやっても『声が聞こえない』ってぶうぶう言ってた」
「…え、いやあの頃の音楽は別に悪くなかったけど」
全然覚えがなくてそう返すと、
「そうだったのか?」
と小さくまたバッキ―が笑う。
「俺はあれこれ引っ張っていっても難しい顔をしてるから『もやしは好みがうるせえなあ』と思ってた」
「『思ってた』じゃない。お前は面と向かって言った」
「そうだっけか?」
なんだか本当に記憶がおぼつかない年寄り同士の会話みたいだと思いつつ、くすくす笑いがこみ上げて止まらない。
見て回った屋台の売り物も激変ぶりでは負けていなかった。
二人が馴染みのある屋台の食べ物といったらアイスやホットドッグ、アメリカンドッグといったものだ。それでも十分であったのだが。
ずらりと並んだフードワゴンは甘そうな菓子だの野菜だの、見たこともない食べ物で溢れている。
「…なににしようか」
そう言いつつ、つい馴染みのあるホットドッグを探してしまうスティーブと対照的に、バッキ―はふらりと近くのワゴンを覗き、「揚げたアイス」なるものをひとつ買ってきた。
揚げたての湯気をあげている丸い物体を割ると、確かに中には冷たいアイスクリームが入っていて、揚げたのに溶けていないのはどういうことだと首を捻りつつ半分ずつ食べる。
70年の時代の流れをなんだかしみじみ感じてしまったが、バッキーが続いてカラフルなカップケーキの並ぶワゴンに近づくのに気付いて慌てて止める。
「バック。夕食なんだから」
切れ切れに目覚める70年の間に、まともな食事をするという感覚がずたぼろになっている彼は、好きにさせるとつい甘くて高カロリーなものに走りがちだった。
取りあえずピザのワゴンがあったので1ピースずつ買い、手近なベンチに座って食べる。「ブルックリンスタイル」と看板にあったのだが、食べ終わっても何がどうブルックリンなのか二人とも分からなかった。
そうこうしているうちに日が落ちてきて、公園内にはあちこちで電飾が点きだす。スクリーンでもそろそろ上映が始まりそうだったが、客の観に行く、行かないは半々くらいだ。
ワゴンの前の列も空いて、行列で見えなかった品物も簡単に見えるようになる。ロブスターのサンドイッチだの、アジア風のライス料理だの、普段見かけないものが多い。
「残念だが俺はあと一つくらいで限界だ。お前は気にせず好きなもん食えよ」
そう言うバッキ―に、
「気になるものを買って、ちょっと食べろよ。後は僕が引き受けるから」
と提案すると、何となく微妙な顔をされた。しかし他に良い案もないのでその後はバッキ―が食べてみたいものを文字通りひと口味見をした後、スティーブがきれいに片付けるというスタイルでワゴンを巡った。
「…微妙だ…」
バッキ―がぼそりと呟き、スティーブは横を見る。
「何が」
「昔、まるっきり逆のことをやった気がする」
「ああ」
スティーブも少し前から思いだしていた。昔のスティーブはかなり食が細かったし、病気から食べ物の制限もあったので買い食いなどはめったにしなかった。そんな頃、何かの祭りの時にバッキ―が半ば強引にスティーブを連れだし、食べきれなかったら半分にしようとたきつけて色々な店を回ったのだ。特に甘いアップルパイは普段止められていたのだがどうしても食べたくて、まさに一口だけかじって、あとを全部バッキ―に片付けてもらったのだ。
たくさん食えていいな、と笑うバッキ―に笑い返しつつ、微妙な心境になったのを覚えている。
「…女の子とのデートならともかく、と思ったんだ」
あの時の自分は食べてみたかったあれこれが食べられてうれしい反面、悔しさやみっともなさも感じていた。まるで女の子のようじゃないかと。
「悪かった」
スティーブの頭の中を読んだように、唐突にバッキ―が言う。
「あの時はお前がなんでだんだんむっつりしてくるのか分かんなかったけど、なるほど分かった。俺が悪かった」
そう言ってバッキ―は肩をすくめる。
「それって、今お前がむっとしてるって意味か」
「違う」
もう満腹だと言っていたのにまだ買う気なのか、バッキ―がまた屋台の列を流し見ながら歩きだすのについて行く。
「あの頃俺は、お前のことを考えてるつもりだったけど、思い至らないところもあったなあってことさ。…ほれ、これでほんとにラストだ」
そう言って口元に押し付けられたのは、バターの匂いがするアップルパイだった。ひと口かじって、相手に渡すと、笑って受け取り、残りを歩きながら頬張る。てっきりひと口でまた戻ってくると思っていたら、そのまま食べ続けるので慌てて止めた。
「ちょっとまてバッキ―。全部食べる気か」
「これなら食える」
「え、ちょっと」
揉めながら公園を突っ切って歩く。
すたすたと歩く後姿は、昔と同じではないけれど、何となく雰囲気が軽い。
満腹した二人はその後芝生に転がりながら野外シアターを観て、ものすごく未来の話だと思ってみていた異星人と少年の映画が「クラシックの名作」とかかれた看板を見て静かにダメージを受けたのだった。
おわる
落ちを見失ったけど終わる。
だって8月があと4分で終わっちゃうんですもの!