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えー、30日チャレンジの途中ではありますが、お題った―様で引き当てた題がたのしそうだったのでこれで小ネタ行ってみよう!
「…だめだ、今日は止めよう」
「だな」
敷布の上に突っ伏すスティーブの隣で、バッキ―はごろりと仰向けに転がる。
二人とも服を脱ぎ捨てて汗まみれだ。
なにがどうなってこういう流れになったのか細かく覚えてはいなかったが、確かなのは二人とも酔っていたわけでも、なにかしらの理由でやけくそになっていたわけでもないことだった。
言葉にできないまま二人の間に在ったものが、ふと噛みあってしまったような感覚で、 作戦の決行を明日に控えたテントの中でスティーブが相手に手を伸ばし、バッキ―は黙って自分のシャツを脱ぎ捨てた。
周囲には仲間のテントがあるので、酷く真剣に音を立てないように身体を探り合い、だが、ろくな知識も準備もない状態で身体を繋げようとしてもすんなりいくわけもない。
「取りあえず着ようぜ。凍える」
未練がましく伸し掛かる背をぺしぺしと軽く叩いて、バッキ―が促した。
「明日、また試していいか」
諦めきれない言葉に、ふはっと笑ったのが触れた肌から分かる。
「勘弁しろよ。本気で凍る」
「うん…」
「まあ、そのうちな」
「いつならいいんだよ」
「俺に訊くな。取りあえず任務終わってからだろ。やっちまったら動けるか分かんねえし」
「そ、そうか?」
血が上った頭が一気に冷えるようなことを言われて動揺する。しかしそもそもスティーブが行為を止めようと言いだしたのも、何とか受け入れようとしていたバッキ―の顔色が尋常でなく青白くなったからだった。
明日には列車に乗り込みゾラ博士を捕えるミッションだ。そんな理由で支障をきたすわけにはいかない。
「今日はこのまま泊めてくれよキャプテン」
シャツとズボンを着込んだバッキ―が不意に言いだすのに瞬きをする。
「いいぞ、もちろん」
「なんか変な顔になってそうだ」
バッキ―はそう言って手のひらで自分の顔を叩く。その目が少し赤くなり潤んでいるのに気付くと、また腹の奥がもやもやとしてきてスティーブは少し息を吐いた。考えてみれば休暇でもない任務の移動中に何をしているのだという話だ。内心が見えたわけでもないだろうに、バッキ―が心配そうな顔をする。
「おい、大丈夫か。欲求不満で明日しくじるなよ」
「まさか」
確かに不謹慎な行為と言えばそうだが、スティーブとハウリングコマンドーズの任務は文字通り切れる間がない。これはこれ、任務は任務と割り切れる。
だが、翌日の戦いの中で列車から断崖に落ちたのは自分ではなかった。
「――――!!」
叫んで伸ばした手は届かない。
絶望と恐怖に見開かれた彼の目が雪の中に消えていくのだけはしっかりと見えたというのに。
昨夜のことと直接の関係はなかった。だが、スティーブの中には自分の行為と親友の死が、罪悪感を伴って強烈に結びついた。
「…で?」
「あの時、お前『そのうち』って言っただろ」
「そんなこと言ったか?」
「言った」
「そっか…」
はは、と掠れた声で笑ってバッキ―が輸送機の壁に凭れる。
ここはシベリアから飛び立ったティ・チャラの操る機体の中だ。どこに向かうかは聞いていないが、通信をしているティ・チャラの声をもれ聞いていたバッキーが、
『このまま母国に帰るらしい』
と囁いてきたので、恐らくはワカンダに向かうのだろう。
二人そろってボロボロのずたずただった。手加減されていたとはいえ文字通り鉄の男と対峙したのだから、自力で動けるだけ運がいい。
こんな場面でする話ではないと分かっていたが、片腕を焼き切られたバッキ―が意識を失わないように、何か話しかけていなければと思った。具体的ではないにせよ思い出話のチョイスが微妙だったのは、さすがの超人血清をもってしても補いきれないダメージで意識が朦朧としていたせいもあるだろう。
「少しは上達したか?」
すぐ隣にいるスティーブでさえ、周囲の音に紛れて聞き取れないような声で、バッキ―がさらに際どいことを尋ねてきた。高潔な王の耳に届かないことを祈りつつ、スティーブも相手の耳に口を寄せ、ぎりぎりで聞き取れる程度の声で囁き返す。
「してるわけないだろ」
すると、数秒おいてから、バッキ―の目が信じられないというように見開かれた。
「…おい、まさか」
「うるさい」
さすがにこれ以上詳しい話をする気は起きなかったので目を閉じる。バッキ―も察したようで口をつぐんだ。もとより再会してからの旧友はしゃべっている時間よりも暗い顔で黙りこんでいる時間の方が圧倒的に長い。
しばらくはどちらも無言で座りこんでいた。
「…お前が死ななくて良かった」
また脈絡なく言葉が口からこぼれる。
常の自分ならこんなことはしない。その場の役割を必ず考え、必要なことだけ口にする。ワンダに言った言葉ではないが、まさに16歳に戻ったような子供じみた話し方だと思った。
軽く自己嫌悪に陥っていると、肩をぱしぱしと軽く叩かれる。隣を見ると無精ひげだらけの顔で親友がこちらを優しい目で見ていた。
不意に遠いあの日と今が繋がり、目の奥がまた痛くなる気がしてスティーブはもう一度強く目を閉じた。
おわる。
「二人で過ごす最初で最後の夜だと分かっていた」
で書きだす、というお題だったんですよ。すてきー。
某S様はこれでステバキを800p書けると言い、某K様は64pだなと言われたんです。
ぼかあ「自分なら4pだな」と思って書いてみましたが、70年を股にかけてもやっぱり2pくらいにしかなりませんでした。
うむ。やはりな。なんかバランス悪いけどもう上げちゃえ。