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脈絡もなくピンク
「……!」
上擦った声が喉から洩れた。焦って歯を食いしばろうとするのだが、狙ったようにつきあげられてかなわない。
「うぁ、あ、」
息とも声ともつかないものが、再度喉から溢れてしまう。
(ちくしょう)
超人血清の効果は身体面だけでなく精神面にも作用する。
元から勘も頭もよかったスティーブは、あらゆる面で驚異的な学習能力を身に着けていた。
知ってはいたが、こんなところでまで発揮されるとは予想外だ。
ただがむしゃらで無我夢中だった最初の頃が嘘のように、この頃はこちらの方が何が何だかわからなくなる時まである。
身体の奥を掻き回される快感はコントロールもできず予測不能に与えられるもので、受け止めるこちらはただしがみついているだけだ。
これは果たして自分が知っているセックスと同じものなのか。
ブルックリンの街の昔や、駐屯地での休日で楽しんだ逢瀬とは似ても似つかない気がする。
いつの間にか閉じていた目をこじ開けて、覆いかぶさる相手を見上げた。気持ちよさそうに切なげな顔をしているのにふと胸を突かれるような気がして、右手を伸ばして短いブロンドを撫でてやると驚いたように目を見開いた後、汗まみれの顔で嬉しそうに笑った。
ああ、お前だよな。
髪を梳いた手を取られ、手のひらに唇を押しあてられる。その行為そのものよりも、目を伏せたその角度から見る顔が、昔見下ろしていた彼のままであることに鼓動が上がった。
視線が合い、目だけでもう一度スティーブが笑う。
その青に気を取られているところでまた深い突き上げが来て、息が詰まった。
持っていかれる。
脈絡もなくそう思い、それでもいいと思った。
身体の奥の、どこか強張っていたものを緩める。熱が酷く深いところまで侵食してきて、本当に食われるような錯覚に陥る。身体がのけぞり、声だか息だかはもう悲鳴のようだ。
泣いているみたいに聞こえるな、とふと他人事のように思う。みっともない。でもいい。お前にならいい。
ちかちかと星が飛び、喉の奥が鳴る。
感覚がギリギリと絞り込まれて、頂点が近いのが分かる。
もうすぐだ。
手足が強張り、その感覚に備える。
もう、すぐ。
……と。
「大丈夫かバッキ―。痛いか?苦しい?」
気遣わしそうな声がして、動きが止まった。
「………」
そりゃあ痛いとも苦しいとも。
いまさら何言ってやがんだこの馬鹿は。
その昔、色事の手ほどきをしてくれた未亡人をふと思いだした。
優しく余裕を持って、性に未熟なガキどもに、ベッドでのあれこれを教えてくれた。
そうだ、こいつはいくら誘ってもあの館に行こうとしなかった。後で後悔するぞと思ったが、まさか後悔するのがこっちだとは予想範囲を越えている。
彼女ならこんな時にも「馬鹿ね」と優しくたしなめて、続けるように促してくれただろうが、あの真似はできない。無理だ。
ああ80年くらい前にこいつをつき返したい。
コンマ0.2秒ほどでそんな思考をめぐらした後、やはり偉大な彼女のような高度な教育的指導を口にするのは諦めて、バッキーは
「この馬鹿!」
とだけ口にして、心配げに覗き込んでくるモヤシ野郎を殴り飛ばしたのだった。
終わる
後日状況を悟ったキャップは、
「だってあの時のお前の様子が…」
と詳細に身体的状況を語りだしかけて、もう一度ウィンター・ソルジャーに殴られることになるのだ。