[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
洋画、洋ドラマ色々について腐的にブツブツいうファンサイト
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
先日のメモを文にしてみる
凶悪犯罪者を閉じ込める独房に収監されているというのに一切の身体拘束はなく、他の囚人たちとの接触を完全に断たれているのにもかかわらず、刑務所内の誰もがその存在と挙動を知っていた。
看守は「彼」と過剰に親しくなることや信奉者になることを避けるために一定期間で交代し、必ず合間に「教育」し直された。
テロリストの逃亡をほう助し犯罪者に墜ちたとはいえ、人々の記憶から子供の頃から慣れ親しんだ『彼』を完全に消し去ってしまうのは困難だったからだ。人の記憶はスミソニアンの展示のように一夜できれいさっぱり撤去するというわけにはいかない。
彼は永く「アメリカの象徴」と呼ばれてきたが、それは死者は反論もせず、生者の都合でなんとでも使えるためだった。しかも彼には生き残った身内もおらず、なんの権利も主張しない。
今、再び生きた人間として存在するようになったスティーブ・ロジャースに付けられた代名詞は、
「戦前の遺物」
「思考の硬直した実験体」
「危険な煽動者」
といった類のものだ。ソコヴィアの事件以来高まっていたアベンジャーズへの反感を緩和するため、その元凶の役割を負うことになった。
今や国連の管理下にあることを了承したアベンジャーズ・チームは実質的にトニー・スタークを中心とする数名であり、今後は『スティーブ・ロジャース』という患部を切り捨てた正義の超人達として華々しく活用される予定であったからだ。
一方で、囚人である彼には時に『依頼』があった。
国連管理下の部隊となったアベンジャーズは、政治的駆け引きの中で出動機会は格段に落ちた。彼への依頼は、その穴埋め的な物だった。
彼は依頼の軽重や危険度は問わなかったが、その依頼内容については必ず明確な説明を要求し、自身が納得しない限り協力を拒んだ。
既に軍人でもなく、服役中の彼に命令を受ける義務はなく、管理側はせめてもの圧力として依頼の拒否の度に私物の没収や身体の拘束を行った。だが、それはただでさえ何かといえば『彼』に同情的になりがちな周囲への悪影響の方が多大だったため、次第に依頼元が態度を変えざるを得なかった。
『依頼』を受ける際に、彼が説明の他に必ず報酬として要求するものがあった。
特定の囚人との面会だ。
その囚人は彼以上に厳重に拘束され、危険人物として一切外部との接触を断たれていたが、彼はその相手との面会なしには一切の協力を拒んだ。
「バッキー」
白い隔離室の扉が開いて、入ってきた相手にスティーブは微笑みかける。
「よう、またひと仕事したのか」
「そういうことだ」
オレンジ色の囚人服を着たバッキ―は、左腕が肩から無いのは前と変わらないが、今日は伸びていた髪を短く切り、髭もそられてこざっぱりした印象だった。
「それ、いつだ?」
「昨日。キャプテン・アメリカのお呼びだから身ぎれいにしろとさ」
「それまでは」
「さあな」
半ば予想通りの答えだが、相変わらずの冷遇ぶりにスティーブは眉をひそめる。
国連本部爆破は冤罪だったことも、70年にわたる暗殺行為が強制的洗脳に寄るもので一概に責任を問えないことも考慮はされたが、それでもキャプテン・アメリカと、洗脳され長年暗殺者として利用されてきたバッキーでは、その処遇には大きな差があった。
「心配すんなって。凍らされてるよりは随分ましだ」
「比べるものが悪すぎるだろう」
笑ってみせるバッキ―に、スティーブは更に顔をしかめた。
「なあ、お前ずっとそうやってぶりぶりしてる気なのか。あと何分残ってるんだ?」
だが、呆れたような声に我に帰る。そう、時間は短いのだ。
「今日は庭に出られる。行くか?」
そう言うとバッキ―は目を瞬いた。
「…お前、一体何やらされたんだ」
「しっかりしろよ。運動許可すらない方が人権問題なんだぞ」
スティーブがそう言うと、バッキ―は無言で肩をすくめる。
彼の人生が人並みの人権を語れる状態にあったのは100年近い歳月の中の最初の四分の一だけだ。
「じゃあ、今日は外でランチにするか?」
外に向かう通路へ足を向けながら、バッキ―が言うのにスティーブは頷く。
「いいな」
約束されたはずの治療が進展している様子はない。
だがそれでも髪を切ったバッキ―が陽の光を受けて穏やかな表情を見せている今をあえて壊す気にもならず、スティーブは口をつぐんだ。
詰まったのでここまで。
誰か続きを書いてくれぬものだろうか…
キャプ好きなのに、投降して冷遇されている設定に萌えるのはなぜだろう…