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Half of Bean分室

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先約ずみ

唐突な妄想。(そんなんばっか)
CW後キャップとバッキーはアベ基地で、拘束はないけど政府の監視下にある、という設定。



室内は騒然としていた。警報が鳴り響き、せわしなく走り回る足音が聞こえる。

「敵襲か」

アベンジャーズを敵視する相手は腐るほどいるが、基地に直接攻撃が届くこと自体が珍しい。

 

「迎撃しないのか?」

スティーブの問いにトニーは顔をしかめて答えず、隣のローズ大佐が肩をすくめた。

「まだ許可が出ていない」

「ソコヴィア協定か。直接攻撃を受けていても?」

「改正案はとっくに出しているがまだ20ヵ国ほどが了承していないんだ」

この機会に集めているけどな!と毒づきながらどこぞとやり取りしているトニー。

 

「お前目当てということはあると思うか?」

率直に尋ねるスティーブに、バッキーは苦笑する。

「…だけってことはないと思うが」

意思のない道具であったことも良し悪しだ。任務の理由も説明も不要で、ただ狙った対象に撃ち出される弾丸だったバッキーが、ヒドラについて知る情報は実のところ少ない。

短期間の任務の後はすぐに冷凍状態に戻され、次に目覚めたときには命じる相手も周囲の状況も変わっている。さらには度重なる記憶の消去で自分の就いた任務の記憶自体もかなり曖昧だ。

少し前に聞き取りを傍聴していたトニーに、
「全部覚えてるんじゃなかったのか」
と訊かれたバッキーが、
「あのビデオを見た後で『知らん』なんて言えるか」
と応えて、周囲を絶句させていた。

だが、情報源としての価値は低くても兵器として狙われる可能性もなくはない。
「奴らにしてみれば『回収』だな。手元に戻せばまた使えるんだから」
「そういう言い方はよせ」
スティーブが顔をしかめる。

 

「だが、ここにいる時で良かったな。揺れはうるさいがシールドの強度はまだ余裕だし、さすがに中には入らせん」
いざとなればどうせ数秒でスーツを装着できるであろうトニー以外の面々は、トニーのセリフを聞き流しつつそれぞれの戦闘準備を整えている。

「だが、音は聞こえる」
ぼそりと言ったのはバッキーだ。
「小型マイクでも外からでも、ジモのように起動の10ワードを唱えられてしまったら俺は逆らえん」
「そんなことはさせない。お前をもうあんな目には合わせない」

「……お仕置き中の爺さんたちは出動権利がないからな。一番奥のシェルタールームで大人しくしていろ」

地下の小部屋だ。狭いとか文句言うなよ、と毒づくトニーに答えず、バッキーはスティーブを振り返った。

「もっと確実でいい手がある。お前が俺をしばれ」

「バッキー、それは」

「ウィンターソルジャーの起動は早い者勝ちだ。お前がマスターになれば、敵に使われる危険もない。10ワード、覚えてるよな」
「ダメだ。お前をもの扱いするなんて」

「じゃあ、俺が侵入してきたやつに乗っ取られてもいいのか」

黙るスティーブに畳み掛ける。

「どうしてもお前が嫌なら、スタークの息子に頼む」

「バッキー」

「わかんねえのか!?さっきも言ったろ、俺は従う相手を選べないんだ」
数秒にらみ合うが、口を開かないスティーブにじれたバッキーが、ぎろり、とトニーの方を向く。
「スターク」
「止してくれ、俺を年寄りの喧嘩に巻き込むな」
じり、と近づかれかけたトニーは慌てて手を振ると、スクリーンの方に逃げる。

「…何かしら、急に昼ドラ見せられてるような気分になってきたんだけど」
「まあ、GOサインが出るまで暇だしなあ」
戦闘準備を整えたナターシャとクリントは、周囲の様子に目を配りつつ傍観している。

「…わかった、バッキー」
バッキーの腕を掴んだスティーブが頷き、トニーはやれやれと息をついた。そして「直接攻撃ですから、市民の権利として自衛しますよ!」と通信機越しにどこぞのお偉方相手をせっつく作業に戻る。
『アベンジャーズは国連の管理下にある。指示を待て』
「だがこの建物と敷地は私の個人所有だ。私には財産を守る権利がある。基本的な権利が守られないようでは、協定に大幅な修正を求めざるを得ない」
『急がせている。もう少し待て』
「こんなことでは危急の事態に対応できないという、キャプテン・アメリカの主張に根拠を与えてしまうのでは?」
『もう少しだ!』

どうも半ば以上確信犯なトニーの声を尻目に、スティーブはバッキーと向かい合った。
「じゃあ、いくよ。速さは?」
「細かい奴だな…連続じゃなくて、一語ずつだ、多分。俺を使った奴らは大体そうしていた」
口の端をわずかに上げるバッキーにうなずきかける。

「わかった。…熱望 」
「錆びつき 」
「17 」
「夜明け」
唱えられるロシア語に、バッキーが緊張したように鋭く息を吸いこむ。
「大丈夫か?」
「そんな単語ねえだろ…続けろ、早く」
慌てて声をかけたスティーブに切って捨てるように返す。
「灼熱 」
「9 」
「温情 」
「帰郷 」
「1」
「貨物列車」

10ワードが終わりに近づくにつれ、バッキーは静かになり、最後には黙って俯いてしまう。
「バッキー?」
沈黙するバッキーに、スティーブがそっと話しかけると、ゆっくりと顔が上がった。
「…服従します」

無機質になった声に、予想通りとはいえ周囲は沈黙する。だが、スティーブは違った。
「君はウィンターソルジャーじゃない。僕の親友のバッキーだ」
「……」
おいおい、大丈夫か、混乱しないか。周囲の視線をよそにキャプテン・アメリカの指示は続く。
「君の任務は自分の身を守ることだ。僕たち以外の者から。それから防衛中も誰も殺すな」
「了解した」
「僕が何かほかの指示を出すまでは、僕の傍にいてくれ」
「お前の傍にいる」
こくりとバッキーは頷き、スティーブをじっと見つめる。正面から見つめ返してにこりと笑うスティーブに、目を見開いてぱちぱちと瞬きした。

「…ますます昼ドラっぽくなってきたわね」
「子供も見られる全年齢向けだがな」

「爺さんたち、気が散るから早くシェルターに行け!!」
怒鳴るトニーに、スティーブはバッキーの背に手を回し、促しながら声をかけた。
「修正案を出すなら、緊急時には僕らも使えるようにしておいた方がいい。奴らは収監時に臨時法を作ってそうしていたぞ」
「その連中と同じことをしろって言うのか?」
忌々し気に振り返るトニーに、スティーブはしらりと返す。
「法があろうがなかろうが、君たちに必要なときには僕は動く。法を破りたくないならそうしておけということだ」
そしてそばで待っていたバッキーを促すと、今度こそシェルタールームに移動していった。
「なんで年寄りはいつもああ偉そうなんだ!!」
頭をがりがりかきむしるトニーに、ローズ大佐が
「実際のところ眠っている期間を除けば、二人とも30前後の若者だぞ」
とフォローになっているんだかいないんだか不明な声をかけるが、
「余計に腹が立つだろうが!」
と一蹴される。

「昼ドラ終わっちゃってつまんないわね」
「これからというときに場面転換だなあ」
エージェント二人はつまらなそうに使いそうもない武器の装填を確かめる。

実際のところアベンジャーズ基地にとっては大した危機ではなかったわけだが、協定の小回りの利かなさをつつくいい機会ではあったので、各国や国連の反応に何分何秒かかったかといった記録は熱心に取られたのだった。




もうこの辺で切る。

「10ワードで俺をしばれ」ってキャップに言うバッキーが見たかっただけでござーる。
たぶんあちこちに山ほどあふれているに違いない。支部かな…










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