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Half of Bean分室

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30日ステバキチャレンジ2日目「抱きしめる」

「抱きしめる」

なんてなんぼでもやりようがありそうなお題でしょうか!←なめたことを言うな



・・・・・・・・・・

意外な気もしたが、一緒にいる時間の長さのわりに、彼を抱き締めたことはほとんどなかった。
思い出せる限りでは、バッキーの出征前、あの未来博のハグが最初で最後ではなかったか。

彼は隣にいるのが自然な相手で、それにいちいち感動はしなかった。
ただあの時はその相手と、もしかしたら今生の別れかもしれないという思いがあって、どちらともなく手を伸ばし合ったのだ。

因みに次にハグをしてもおかしくなさそうな場面が来たのは捕虜になっていたバッキーを救出した時だったが、このときは何せ基地が爆発寸前だったので、肩は貸しても悠長なことをしている暇はなかった。


「…なに変な顔してんださっきから」
微かにからかうような響きを含んだ低い声に、スティーブはぱちりと瞬きをした。
「別に」
多少拗ねたような言い方になってしまうのはもう反射のようなものだ。だけど実際のところ拗ねている時間など無い。ワカンダでのコールドスリープの準備は整い、左腕が無いままのバッキ―は眠りにつくための白い服に着替えていた。

「俺の洗脳を解除する方法が見つかったら起こしてくれ」
そうしたらまたお前の背中を守れる。
バッキ―はハッピーエンドのストーリーラインを語るように言うが、そうならない可能性も大いにあるのだ。

解除の方法が見つからない可能性。
いずれ見つかるにしてもスティーブがそれを見届けられない可能性。
次にバッキ―が目覚めたときには、ペギーのように年老いていることだってありえるのだ。

「おい、やる前から諦めんなよモヤシ野郎」
心の声が聞こえたかのようなことをバッキ―が言う。首をかしげて話すその癖は、昔とよく似ていた。
「僕に面倒なことを任せて、自分は寝ようとしてるんだから文句くらい言わせろ。この間抜け野郎」
そう言うとバッキ―は反論せず、口を泣き笑いのような形に歪める。
「すまん」
「いや」
もちろん二人きりなどではない。周囲には医療スタッフと技師たちが忙し気に行き交い、見届けるという国王が来るのを待っている。

「俺が起きるまで無茶すんなよ」
いつかのようなセリフだった。
瞬間、叫びそうになる衝動を堪えてスティーブは歯を食いしばる。
「…お前がいなきゃできない」

腕を伸ばしたのは多分同時だった。
相手の存在をかみしめるように、その身体を抱きしめた。
失くしてたまるものか。また会わずにおくものか。
言葉にはならなかったが、固く自分の背を抱く片腕が、同じ思いを伝えてくるようだった。

 


終わる。
よし二日目!

 

 

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